目が覚めると時計の針は10時35分。

なんでか分からないけれど、11時には行かなきゃならない場所がある。

だけど家族がバタバタしてて何かを手伝わなければならない。

普段は絶対にそんなことしないのに。

せっかく家のやる事終わったのに、行きたい気持ちと焦りを抑え込んで玄関でなんでか待ってる自分がいる。

イライラしてる。

行かなきゃならないのに、もう10時50分。時計の秒針が目まぐるしいスピードで動いているのが分かる。

どう考えても間に合わない。行かなきゃならない場所までは20分はかかる。

完全に遅刻。

なのに、足が動かない。

物凄いスピードで動いている秒針を眺め、気づいたら11時を過ぎていた。

電話が来る。その場所からの電話だ。

”何をしてるのか?”
”パスタを作る人がいない”
”料理はなんとか作ったけど金庫の鍵がないからレジ会計が出来ない”
”怒ったお客様が支払わずに帰った”
”食い逃げされた、どうする?”

そんな電話が5分置きにかかってくる。

ようやく家を出た俺は猛ダッシュでその場所まで走っていく。

スタミナが無限大。ずっと全力疾走でいける。息も上がらない。

だけど走れど走れどたどり着かない。電話も鳴り響く。

突如の大雨。

猛ダッシュでズブ濡れ。

焦る。

遅刻してるし、ズブ濡れだし、迷惑ばかりかけてる。

ただただ焦る。

その場所に心配をかけてる。

走って、濡れて、もう1時間は経った。

今まで大丈夫だったスタミナが突如切れてしまう。

もの凄い息切れ。

今までに経験したことがないほど湧き出る汗と雨がまじり合う。

膝に手を付いて苦しい息を整えてるときにふと横を向いたらその場所があった。

安心した。

と、同時に目の前が真っ白になる。

・・・

・・

目が覚めた。

焦ってスマホを見ると10時11分。店から着信が数件入っている。

本当に遅刻した。